まぶたや目の下などにできる白っぽい小さなブツブツ。
「ニキビだと思っていたのに、なかなか治らないな」と悩んでいる人はいませんか?もしかすると、それは「稗粒腫(ひりゅうしゅ・はいりゅうしゅ)」かもしれません。
今回は、稗粒腫の原因や治療法について、解説していきます。
稗粒腫とは
稗粒腫とは、1~2mmほどのかたい丘疹(きゅうしん:隆起した発疹)です。見た目がイネ科の植物である稗(ひえ)に似ていることが、名前の由来といわれています。
稗粒腫は、白色~黄白色をしていることもあって、脂肪の塊だと思っている人が多いのですが、目の周にできるぶつぶつの原因は古い角質です。何らかの原因で毛穴の入り口付近の上皮(表面の皮膚)が皮膚の中に入りこみ、古い角質がかたまりとなって、稗粒腫を形成します。まぶたや目のまわりにできることが多いですが、あごやおでこ、鼻、陰部などにもできることがあります。
稗粒腫には、生まれつきできるもの(原発性)と、大人になってからできるもの(続発性)とがあります。原発性の稗粒腫は、妊娠中のホルモンの影響や汗腺が未発達なことなどが関係しているともいわれていますが、はっきりとした原因はわかっていません。また、赤ちゃんの場合は鼻やあごにできることが多いのですが、成長とともに自然に消えていくことがあります。
これに対して続発性の稗粒腫は、やけどや手術痕、水泡症、放射線皮膚炎などの後に発生することが多く、これらの病気によって、皮膚の組織が破壊されることが原因と考えられています。また、思春期以降の女性に多く見られるという特徴があり、白ニキビと誤解されることがあります。
稗粒腫の治療
稗粒腫は良性で、周囲にうつしてしまう心配もないことから、必ず治療をしなければいけないものではありません。またお伝えしたように、生まれつきのものは、自然に消える可能性があり、診察の結果、経過を観察する場合もあります。一方、大人になってからできる稗粒腫は、自然に治る可能性は低く、見た目を気にして治療を希望する人もいます。
皮膚科で行われるおもな治療法の一つが、専用の器具を用いて患部を圧出する、という方法です。「圧出法」と呼ばれる方法で、注射針などを使って、皮膚の中にたまった角質のかたまりを外に出します。
この治療は健康保険の適用となるため、治療費を抑えることはできますが、稗粒腫は皮膚内の袋状のものをしっかりと摘出しなければ、全て取り除いても再発する可能性があります。
しかし、炭酸ガスレーザーで治療をすることで、再発を防げるといわれています。炭酸ガスレーザーは、熱エネルギーを使って稗粒腫を除去するため、圧出法と比べると再発のリスクが抑えられると言われています。
炭酸ガスレーザーによる稗粒腫の治療
炭酸ガスレーザーとはその名の通り、炭酸ガスを用いたレーザー治療です。稗粒種に炭酸ガスレーザーを当てると、皮膚内の水分と炭酸ガスが反応して、熱エネルギーを発生させます。
この熱エネルギーが蒸散される際に、病変組織が破壊されて稗粒腫が除去されていきます。治療の直後は患部の皮膚がへこみますが、数か月をかけて新しい皮膚が再生される中で、目立たなくなっていきます。
また、治療後に赤みや内出血が出る人もいますが、どちらも数週間ほどで落ち着いていきます。ちなみに、稗粒腫のほかにも、ほくろやいぼ、シミ、そばかすの除去や、ニキビ・ニキビ跡の改善にも、炭酸ガスレーザーは用いられています。
なお、炭酸ガスレーザーは保険の適用外なので、クリニックによって料金が異なります。稗粒腫の大きさによって、料金設定を変えているところもありますので、事前に確認しておくようにしましょう。
稗粒腫:炭酸ガスレーザー治療の流れ
ここで、一般的な流れについて、簡単にまとめておきましょう。
- ①医師によるカウンセリング
- ②クレンジング・洗顔
- ③局所麻酔
- ④レーザー照射
レーザーの照射時間は、照射範囲や稗粒腫の個数によって異なりますが、5~30分間ほどかかります。治療が終わると、患部に保護テープを貼ります。保護テープは10日間ほど貼ったままにしましょう。
患部以外のメイクやシャワー、入浴などは当日から行えますが、患部をこすったり、いじることはやめましょう。また、保護テープを外した後も、紫外線対策をしっかり行うようにしましょう。
稗粒腫かな?と思ったら
その見た目からニキビなどと間違われやすい稗粒腫。自分で触ったりつぶしたりしたくなってしまう人もいると思いますが、誤ったケアをしていると、トラブルの元になります。お伝えしたように、稗粒腫は絶対に治療が必要なものではありませんが、気になって仕方がない人は、ぜひ一度、皮膚科で相談してみてくださいね。
稗粒腫を再発させないためには
稗粒腫は一度治療しても同じ場所に再発してしまうことがあります。肌に刺激を与えず、皮膚のターンオーバーを正常化させることで再発防止に繋がります。
スキンケアを見直す
間違った方法で毎日行うスキンケアを行うと、お肌にダメージを与えてしまいます。強く擦ると稗粒腫を発症するリスクが高くなり、ダメージが蓄積されると肌トラブルを起こしやすくなります。
洗顔をする際は、石鹸をよく泡立てて擦らずクルクルと泡で肌の汚れを落とすように行うほか、洗顔後は清潔なタオルで優しく抑えるように水分をふき取り、しっかりと保湿を行ってください。
その際は、油分の多いクリームやワセリンなどは使わずにさっぱりとした化粧水や乳液を使うことをおすすめします。乾燥肌の人は、セラミドやヒアルロン酸、コラーゲンが含まれているものが良いでしょう。
定期的にピーリングを行う
稗粒腫は皮膚の中に角質が詰まって発症するため、定期的にピーリングなどで余分な角質を除去し、肌のターンオーバーを整えることが大切です。
最近ではドラックストアでもピーリングジェルが販売されていますが、間違った方法で行うと健康な肌を傷つけてしまう可能性もあるため、医療機関でピーリングを行うことをおすすめします。
当院では、ケミカルピーリングやコラーゲンピール、ハイドロピーリングといったターンオーバーを活性化させるメニューをご用意しております。
稗粒腫は自分で除去しても大丈夫?
稗粒腫は表皮の下に張りついているため、自分で除去することは難しく、針やピンセットで無理やり稗粒腫を取ろうとすると、かえって皮膚に傷跡が残る可能性が高くなってしまいます。
そのため適切な処置を行わないまま放置すると、傷口から黴菌が入り、細菌感染を起こすリスクもあるため、ご自身で除去するのではなく、皮膚科や美容クリニックなどで除去することをおすすめいたします。
また乳児にできたものは、自然に消えることはありますが、成人になってからできた稗粒腫は自然治癒することはほとんどありません。稗粒腫が出来てしまったら、速やかに皮膚科や美容クリニックを受診することが大切です。
まとめ
- 稗粒腫は、1~2mm程度のかたい丘疹(きゅうしん:隆起した発疹)
- 稗粒腫は、白色~黄白色をしている
- 何らかの原因で毛穴の入り口付近の上皮が皮膚の中に入りこみ、古い角質がかたまりとなって、稗粒腫が作られる
- まぶたや目のまわり、おでこ、あご、鼻、陰部などにも発生する
- 稗粒腫には原発性のものと、続発性のものがある
- 原発性の稗粒腫は、自然に消えることがある
- 続発性の稗粒腫は、手術痕、水泡症、放射線皮膚炎などの後に発生する
- 思春期以降の女性に多く見られる
- 稗粒腫は、放っておいても問題はないが、見た目の問題から治療を希望する人が多い
- 皮膚科では、注射針などを用いた圧出法が行われるが、これだけだと再発することがある
- 再発を防ぐためには、炭酸ガスレーザーが有効
- 炭酸ガスレーザーを照射すると、発生した熱エネルギーとともに稗粒腫も蒸散する
- 炭酸ガスレーザーは保険適用外
- 稗粒腫が気になる人は皮膚科に相談を
- 稗粒腫は一度治療しても同じ場所に再発してしまうことがある
- 定期的に医療機関でピーリングなどを行うと良い
- 稗粒腫は自分で除去するのは危険
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