カリウムの名前は知っているけれど、どんな栄養素なのかイマイチわからないという人は多いかもしれません。でも、カリウムは健康維持に欠かせないもので、とくに暑くなる季節に摂りたい栄養素です。さらに、美容面でうれしい働きもあります。そこで、カリウムの働きや摂取する際のポイントについてご紹介します。
カリウムとは
カリウムは体内にある電解質で、5大栄養素のミネラルのひとつです。自然界には100種類以上のミネラルがありますが、体内に存在するものは60~70種類といわれています。このうち生命を維持するうえで欠かせないものは「必須ミネラル」と呼ばれていて、全部で16種類あります。必須ミネラルには、カルシウムやマグネシウム、鉄、亜鉛などがありカリウムもそのひとつです。
体内で重要な役割を果たすカリウム
ミネラルには、身体の組織を構成する、体内のさまざまな働きを助けたり調整するといった役割があり、カリウムも体内で重要な働きをしています。代表的なものをご紹介しましょう。
細胞の浸透圧や体液のpHを調整する
カリウムのほとんどは細胞内にあり、細胞外のナトリウムと連携して細胞の浸透圧や体液のpH(水素イオン濃度)などを調整しています。カリウムとナトリウムは「ブラザーイオン」と呼ばれていて、お互いにバランスをとりながら働いています。
過剰なナトリウムを排出する
カリウムには、ナトリウムの過剰な再吸収を抑えて尿として排出されるのを助ける働きがあります。塩分の主成分であるナトリウムの摂りすぎは、高血圧など生活習慣病のリスクにもなるので、こうした病気を防ぐうえでもカリウムはとても重要です。
神経や筋肉の働き正常に保つ
カリウムが不足すると神経の伝達や筋肉の収縮がスムーズに行われなくなり、イライラや睡眠不足、倦怠感、便秘や下痢、むくみといった不調が起こりやすくなります。また、運動中に起こるこむら返りの原因としてカリウム不足が指摘されることがありますが、これはカリウムが筋肉の動きにかかわっているためです。
カリウムと美容の関係
ここまでカリウムの基本的な働きをご紹介しましたが、美容の面では次のような効果が期待できます。
むくみを予防する
むくみは体内に水分が過剰にたまることで起こります。その原因のひとつとして挙げられるのが、塩分(ナトリウム)の摂りすぎです。ナトリウムには、体内で過剰になった時に水分をためこんで、薄めようとする働きがあります。そのため塩分を摂りすぎるとむくみやすくなるのです。ナトリウムの排出を促す作用があるカリウムを摂るとむくみ予防に繋がります。
肌トラブル予防に役立つ
お伝えしたように、カリウム不足はさまざまな身体の不調を招きます。こうした不調は当然ながら肌にも影響し、肌トラブルの原因になることがあります。たとえば、むくみは血液の循環を悪化させるので、老廃物がたまってニキビなどの肌荒れに繋がります。カリウムは、こうした肌荒れを予防するうえでも重要です。
このように健康面でも美容面でもさまざまな効果が期待できるカリウムですが、実際にどのくらい摂ればよいのでしょうか。
カリウムは1日にどれくらい必要?
「日本人の食事摂取基準 ※」によると、カリウムの1日あたりの目標摂取量は、成人男性が3,000mg、成人女性が2,600mgです。これに対してWHO(世界保健機関)のガイドラインは、高血圧や心血管疾患、脳卒中などのリスクを減らすためには、1日あたり3,150mgのカリウムを摂取することが望ましいとしています。
つまり、世界の基準と比較すると日本の目標摂取量は低く設定されているということです。だからといって、日本人はカリウムをあまり摂らなくてもよいということではありません。この目標値は、日本人のカリウム摂取量がもともと少なく、WHOの数字を達成することが難しいということで算出されたものだからです。
日本人は不足しがちですので、むしろ積極的に摂るようにしましょう。特に高血圧など生活習慣病のリスクが高い人や食生活が偏っている人は、塩分を摂りすぎている可能性があります。塩分の摂取量を抑えることはもちろんですが、カリウムもしっかり摂るようにしましょう。
カリウムが不足するとどうなる?
お伝えしたように、カリウムは神経や筋肉などに深くかかわる栄養素です。そのため不足すると、筋力低下や脱力感、筋肉痛、動悸、食欲不振などの症状が現れることがあります。
さらに悪化すると、意識消失、便秘、多尿、腸閉塞、不整脈など、より深刻な症状が出るようになります。特に血液中のカリウム濃度が3.5mEq/L未満になると「低カリウム血症」といって、治療が必要な状態になることがあるので要注意です。
低カリウム血症は、腎臓の病気や薬(利尿剤など)の作用、糖尿病の治療で用いられるインスリン注射の影響で起こるほか、偏った食生活や、嘔吐、下痢なども一因になります。また、カリウムは汗と一緒に排出されやすいので、大量に汗をかく場面でも注意が必要です。血液のカリウム濃度が下がって低カリウム血症が起きる可能性がありますから、積極的にカリウムを摂るようにしましょう。
そのほか、カリウム不足の状態で塩分を過剰に摂取してしまうと、血中のナトリウム濃度が上がってむくみが起こったり、その状態が長く続くと高血圧のリスクが高まったりします。
カリウムを多く含む食べ物
カリウムは海藻類や野菜、くだものにも豊富に含まれています。
※以下は100gあたりのカリウム含有量
海藻類
・焼きのり・・・2400mg
・塩こんぶ・・・1800mg
・生わかめ・・・730mg
・乾燥わかめ(水戻し)・・・430mg
野菜
・切干大根・・・3500mg
・ほうれん草・・・690mg
・えだまめ(冷凍)・・・650mg
・モロヘイヤ・・・530mg
・じゃがいも・・・410mg
果物
・干しぶどう・・・740mg
・アボカド・・・720mg
・バナナ・・・360mg
・キウイ・・・300mg
その他
牛ひれ・・・690mg
納豆・・・660mg
カリウムを摂る際のポイント
カリウムは水に溶けやすいので、水にさらしたりゆでたりする時間が長いと、たくさん溶け出して摂取量が減ってしまいます。野菜は生で食べるようにしたり、ゆでる場合は時間を短くしたりするようにしましょう。味噌汁やスープなど、煮汁ごと摂れるメニューもおすすめです。
またカリウムは、海藻類や野菜、くだものなどに多く、外食やインスタント食品ばかりの食生活を送っていると、どうしても不足しがちです。自炊ができない場合でも、インスタントの味噌汁に乾燥わかめをプラスする、ひじきの入ったふりかけをごはんにかける、といった工夫でカリウムを摂ることはできます。また、朝ごはんや間食などにバナナやキウイ入りのヨーグルトを取り入れるのもおすすめです。無理のない範囲で試してみましょう。
サプリメントでカリウムを摂る際の注意点
食事から十分にカリウムを摂ることが難しい場合には、サプリメントを飲むのも方法のひとつです。ただしその際には、1日あたりの摂取量をしっかり守ることが重要です。というのも、短時間で過剰なカリウムを摂取すると「高カリウム血症(血液中のカリウム濃度が5.5mEq/L以上)」を引き起こす可能性があるからです。
カリウムの血中濃度が異常に高くなると、吐き気やしびれ、脱力感、不整脈などが現れるようになり、食事療法や薬物療法が必要になることもあるので注意しましょう。ちなみに、腎機能の低下や薬による副作用なども、高カリウム血症の原因になることがあります。
特に持病などがなく、高カリウム血症のリスクがある薬やサプリメントを服用していなければ、過剰症のリスクはほとんどありません。カリウムを含む食品をたくさん食べても、身体にとって不要な分は尿から排出されるので、過度に心配する必要はないでしょう。
今回は、カリウムの働きや摂りかたについてご紹介しました。お伝えしたように、健康はもちろん、美容面でもカリウムはおすすめの栄養素です。バランスのよい食事を心がけて、美しいこころとからだを目指しましょう。
まとめ
- カリウムは体内にある電解質で、「必須ミネラル」のひとつ
- カリウムには、細胞の浸透圧や体液のpHを調整する、過剰なナトリウムを排出する、神経や筋肉の働き正常に保つといった働きがある
- 美容面では、むくみを防ぐ、肌トラブル予防に役立つといった効果が期待できる
- 1日あたりの目標摂取量は、成人男性3,000mg、成人女性2,600mg
- 日本人は不足しがちなので、積極的に摂ったほうがよい
- カリウムを一定以上摂ると、高血圧などのリスクを減らすことができる
- カリウム不足になると、筋力の低下や脱力感、筋肉痛、動悸、食欲不振などが現れる
- 血液中のカリウム濃度が3.5mEq/L未満になると「低カリウム血症」といって、治療が必要になることがある
- 低カリウム血症は、腎臓の病気や薬(利尿剤など)の作用、インスリン注射、偏った食生活、嘔吐、下痢、大量の発汗などが原因になる
- カリウムは海藻類、野菜、くだものに多く含まれている
- カリウム含む食品を摂る際は、生で食べたり、ゆでる時間を短くしたりするほうがよい
- サプリメントで摂る場合は、高カリウム血症を防ぐためにも摂取量を守ることが大切
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