健康や美容にいいといわれるお酢。最近では果汁やはちみつなどを加えたいわゆる「飲むお酢」などが人気を集めていて、普段の食生活に取り入れている人も多いでしょう。では実際、お酢にはどのような健康効果、美容効果が期待できるのでしょうか。詳しく解説していきます。
お酢ってどんな調味料?
お酢は酢酸を主成分とする酸性の調味料です。酢酸には肉や骨をやわらかくする、食材のあくを抜く、色を鮮やかに見せる、細菌の繁殖を抑えるなど、さまざまな働きがあることから、古くから身近な調味料として親しまれてきました。なますや酢飯など、日本食に欠かせないお酢ですが、実は海外から入ってきた調味料です。その歴史は古く、紀元前5000年のメソポタミア南部で作られていたことが明らかになっています。
日本には4世紀ごろに朝鮮半島から伝えられ、料理の味付けだけでなく、生魚などを保存などに使われてきました。江戸時代になって各地に寿司が広がるようになると、お酢の醸造技術が発展していき、庶民にとっても、より身近なものになっていったといわれています。
ところで、お酢がどのようにして作られているのかご存知でですか?
お酢は、穀物や果実、野菜などの糖質を含む食品をアルコール発酵させ、そこに酢酸菌を入れてさらに発酵(酢酸発酵)させることで作られます。原材料や作り方を変えることでさまざまな種類のお酢を作ることができます。
たとえば、米を発酵させると米酢や米黒酢に、りんごの搾り汁を発酵させるとりんご酢になります。そのほかにもいろいろな種類のお酢があります。そこで、お酢の種類について詳しく解説いたします。
お酢の種類
お酢には多くの種類がありますが、農林水産省では次のように、食酢を醸造酢と合成酢の大きく2つに分類しています。
醸造酢
穀類、果物、野菜、そのほかの農産物、あるいははちみつを原料としたもろみなどを酢酸発酵させた液体調味料で、氷酢酸(ひょうさくさん:純度98%以上の酢酸)または酢酸を使っていないものを指します。醸造酢はさらに穀物酢と果実酢とに分けられます。
穀物酢は、醸造酢の中で原材料として1種類または2種類以上の穀類を使用したもので、その使用総量が醸造酢1リットルあたり40グラム以上のものを指します。具体的には、米酢(米の使用量が穀物酢1リットルあたり40グラム以上)、米黒酢(米またはこれに小麦か大麦を加えたものだけを使用)、大麦黒酢(大麦のみを使用したもの)があります。ちなみに、一般的な黒酢は米黒酢に含まれます。
果実酢は、醸造酢の中で原材料として1種類または2種類以上の果実を使用したもので、その使用総量が醸造酢1リットルあたり果実の搾汁として300グラム以上のものを指します。りんご酢やぶどう酢があります。ワインビネガーやバルサミコ酢はぶどう酢のひとつです。
合成酢
氷酢酸または酢酸の希釈液に、砂糖類や酸味料、調味料(アミノ酸など)、食塩などをくわえた液体調味料、もしくはそれに醸造酢をくわえたものを指します。
ちなみに、「すし酢」や「三杯酢」などは食酢にほかの調味料を加えたもので、醸造酒や合成酢とは区別されています。
お酢の健康効果
身体にとってうれしい効果がいっぱいのお酢。どんな健康効果が期待できるのか、ご紹介します。
疲労回復を助ける
酢酸は体内でクエン酸に変化します。クエン酸には疲労物質として知られる乳酸を分解する働きがあり、疲労回復を促します。
消化を助ける
酢酸には胃液や唾液の分泌を促して消化酵素を活性化させる働きがあります。
生活習慣病の予防に役立つ
これまでの研究で、酢酸には内臓脂肪を減らす、高血圧を予防する、食後の血糖値の上昇を抑えるといった働きがあり、さまざまな生活習慣病の予防や改善に役立つことがわかっています。さらに、酸味は塩味を引き立たせる効果があるため、料理にお酢を使うと無理なく減塩することもできます。減塩は高血圧の予防に欠かせません。
カルシウムの吸収をよくする
骨の健康維持はもちろん、神経や筋肉の働きにも関わっているカルシウムですが、体内で吸収されにくいという難点があります。
クエン酸にはキレート作用といって、カルシウムを包み込んで体内に吸収されやすい状態に変える働きがあります。お伝えしたように、酢酸は体内でクエン酸に変化するので、お酢を摂ると、カルシウムの吸収をよくすることができます。
お酢の美容効果
次に、お酢の美容効果についてご紹介します。
内臓脂肪を減らす
酢酸には脂肪の合成を抑える、エネルギー消費を高めるなどの働きが期待できます。ある研究では、肥満気味の人が食酢を継続的に飲むことによって、内臓脂肪が減ることが実証されました。肥満気味でかつ内臓脂肪が高めの人は、ダイエット法のひとつとしてお酢を取り入れるのもおすすめです。
便秘を解消する
お酢には腸内の蠕動運動(ぜんどううんどう)を促す働きがあり、便秘の予防や改善に役立ちます。その結果腸内環境がよくなると、肌荒れが起きにくくなります。
髪の毛や爪を健康に保つ
お酢は胃酸の分泌を促して、鉄を吸収しやすくします。女性は鉄分不足になりやすいのですが、その状態を放っておくと鉄欠乏性貧血になって酸素が全身に回りにくくなることがあります。すると、顔色が悪くなる、髪の毛や爪などのツヤがなくなるなど、美容面にも悪い影響が出てしまいます。バランスのよい食事にお酢をプラスすると貧血予防になり、髪の毛や爪を健康に保つのにも役立ちます。
お酢の上手な摂り方と注意点
ご紹介したように、お酢は健康にも美容にもうれしい効果が期待できるのですが、上手に摂るためにはポイントがいくつかあります。
空腹時を避ける
酸の強いお酢を空腹時に摂ると消化器官が過剰に刺激されるので、食事の中で摂取したり、食後に摂ったりするのがおすすめです。また、お伝えしたようにお酢には食欲増進効果があります。たとえば、ダイエットを意識している場合、食前にお酢を飲んだりすると食欲が増してかえって食べ過ぎてしまう可能性があるので、注意してください。
適量を心がける
健康や美容によいと聞くとついたくさん摂りたくなりますが、適量を心がけることが大切です。適量は1日あたり大さじ1~2杯ほど。これだけだと健康効果を得られるのか不安に思う人がいるかもしれません。けれども、先にご紹介した内臓脂肪に関する実験でも、1日大さじ1杯ほどで効果が出たことが報告されています。
ちなみに、お酢を継続的に摂りすぎると、健康に害が及ぶ可能性があります。お伝えしたようにお酢は消化器官を刺激するほか、たくさん摂り続けていると酸によって歯が溶けてしまう「酸蝕歯(さんしょくし)」になることがあるのです。酸蝕歯は虫歯や歯周病の原因にもなります。
健康効果や美容効果を期待するのであれば、1度にたくさん摂るのではなく、少量を継続的に摂るほうがおすすめです。また胃腸の弱い人などは、そのまま飲むよりも水などで薄めて飲むほうがおすすめです。
お酢ドリンクを飲む際は糖質の摂りすぎに注意を
ちまたで人気を集めるお酢ドリンク。甘味があって飲みやすく、お酢の酸味が苦手な人でも無理なく摂ることができます。けれども、こうした商品の中には、砂糖やはちみつなどがたくさん添加されているものがあります。
日常的に何杯も飲んでいると、知らないうちに糖質を摂りすぎてしまっていることがあるので注意が必要です。お酢ドリンクを継続的に飲みたい人は、原材料を確認したり、砂糖が添加されていないものなどを選んだりしてください。
また、市販品を甘く感じる人は、自分で作るのもおすすめです。お好みのお酢を水やソーダ水などで割るだけで完成。砂糖やはちみつの量は自分の好みに合わせて調節してみてください。
健康的で美しい身体を目指す人の強い味方にもなるお酢。是非皆様にも普段の食生活に上手に取り入れてみてくださいね。
まとめ
- お酢は酢酸を主成分とする酸性の調味料
- 穀物や果実、野菜などの糖質を含む食品をアルコール発酵させ、そこに酢酸菌を入れてさらに発酵(酢酸発酵)させることで作られる
- お酢は大きく醸造酢と合成酢に分けられ、醸造酢には穀物酢や果実酢がある
- 疲労回復を助ける、食欲を上げる、生活習慣病の予防や改善に役立つ、カルシウムの吸収をよくするなどの効果が期待できる
- 美容面で期待できる効果は、内臓脂肪を減らす、便秘を解消する、髪や爪の健康に役立つなど
- お酢を摂る際には、空腹時を避けること、適量を心がけることが大切
- お酢ドリンクによる糖質の摂り過ぎにも注意すること
▼参照サイト
日本医事新報社:酢の血圧降下作用の科学的根拠と有効な摂取方法は?
味の素株式会社:酢酸菌利用の歴史と食文化
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