「体重が増えてきたら腰が痛くなってきた」という経験をお持ちの方は少なくないでしょう。今回は、体重増加によって腰痛が起こるメカニズムや、体重増加による腰痛の原因、その対策を解説します。
日本人の多くが腰痛に悩んでいる
日本人の腰痛の悩みは、肩こりに次いで多いことがわかっています。
厚生労働省の統計(※)によると、病気やけがなどの自覚症状がある人(有訴者)のうち、腰痛は男性で有訴者率がもっとも高く、女性も肩こりに次いで腰痛の訴えが多いという結果がでています。
※厚生労働省『平成28 年 国民生活基礎調査の概況-Ⅲ 世帯員の健康状況 1 自覚症状の状況より』(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/16.pdf)
肥満は腰痛の原因になってしまう?
腰痛の原因となる腰周りのパーツについてご存知でしょうか?
背骨である脊柱(せきちゅう)を構成する椎骨(ついこつ)。このうち、腰の部分にある5個の椎骨を腰椎(ようつい)といいます。
椎骨と椎骨の間にあるのが椎間板(ついかんばん)。背骨にかかる負担を和らげるクッションの役目を果たしています。
この椎間板が異常をきたすと腰痛になりやすいのです。
とくに肥満になると、椎間板が押しつぶされて薄くなってしまいますから、痛みをともないます。
これが、肥満が腰痛を引き起こす原因のひとつです。
腰痛の原因や腰痛に関連する病気
肥満だけが腰痛の要因になるわけではありません。では、一般的に考えられる腰痛の原因を確認してみましょう。
1.重いものを持つなど無理な負担
2.長時間同じ姿勢をとることによる、筋肉の緊張や血行不良
3.運動不足による筋肉の衰え
1のように急激に腰に負担をかけた結果、腰を痛めてしまうというケースやだけでなく、2や3は慢性的な腰痛の原因になっている可能性があります。そこに体重の増加、肥満が加わると腰の痛みはよりひどくなってしまいます。
腰の痛みに関連する病気には、下記のようなものがあります。
腰椎椎間板ヘルニア
腰痛の原因で最も多い病気です。椎骨と椎骨の間にあってクッションの役目をする椎間板の一部が飛び出してしまい、付近にある神経を圧迫します。腰痛以外に、足にもしびれや痛みを引き起こします。
腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)
腰椎内部で神経が通っている脊柱管が狭くなり、神経組織が圧迫されている状態です。おもな原因は、加齢などによる背骨の変化や老化といわれます。
これらの場合には、セルフケアだけでなく専門の医師の診療を受け、治療することが大切です。
体重がどれくらい増えると腰痛になりやすい?
具体的にどれくらい体重が増えると腰に良くないのかは個人差が大きく一概は言えません。腰への負担は重量よりもむしろ姿勢の変化によって生じるからです。
例えば、体重が現在より3kg増えると、お腹周りに脂肪がつき、腹囲が3cmほど大きくなったとします。そうすると、バランスを取るために重心は前に出ます。姿勢は後ろに反り気味になって腰に負担がかかります。この負担が蓄積し、腰痛の原因になるのです。とくに立ったり座ったりの動作は、体を反りますから腰への負担はさらに大きくなります。
腰痛を防ぐには?日常生活での注意点
腰に負担をかけないように注意して、正しい姿勢をとることが大切です。
座っているとき
座っているときは腹筋を緩ませないようにします。ダラッとした姿勢で座ると腹筋は緩みます。ですから、お尻が背もたれに付くように深く座り、お腹を背中に付けるような気持ちで引き締め、背筋を伸ばし、首もまっすぐにします。そうすると腹筋も緩みません。
椅子は、膝や足首が90度になる高さに調節するとよいでしょう。
立っているとき
背骨をまっすぐ上下に伸ばし、頭もまっすぐ支えて、両足に均等に体重が乗るようにします。足裏全体で床を踏みしめます。そして、腹筋を意識して締めます。
物を持ち上げるとき
床にあるものを持ち上げるとき、まずは、しゃがんで腰を落とし、膝を曲げてから、ゆっくりと持ち上げます。前かがみになったまま膝が伸びていると、腰椎や椎間板に大きな負担がかかります。くれぐれも注意してください。
寝る姿勢
腰痛がある人は、仰向けで寝ると目が覚めたり、腰が痛くて起きられなくなったりします。横向きで両膝を抱えるような姿勢で寝ると、背骨が丸くなって腰が楽になります。
腰痛予防に適した運動
腰痛のある人は、運動をする習慣のない人が多いようです。まずは、日常生活の中で体を動かす工夫を取り入れてみませんか。たとえば、エレベーターやエスカレーターをやめて階段にする、一駅分歩いてみる、遠くのスーパーまで徒歩で買い物にいく…などです。
また、体幹(インナーマッスル)、腹筋、背筋の筋肉を鍛えると、コルセットのように腰を守ってくれますので腰痛予防になります。
ただし、腰が痛いときに無理な運動をするのはやめましょう。
運動は、自分の体力やその日の体調に合わせ適切に取り入れることが大事です。
スクワット
スクワットは道具も不要でいつでもすぐにできるおすすめの運動です。
1.脚を腰幅より広めに開いて立ち、つま先、膝は少し外側に向ける。
2.そのままの姿勢でお尻を後ろに引いて、椅子に座るように膝をまげていく。
(90度を目標に、無理のない範囲で曲げてください。)
3.立ち上がる。
スクワットは1日10回、2セットが目安です。
※注意
・つま先より膝が前にでないようにお尻をしっかり後ろに引く
・しゃがむ時に息を吸い、膝を伸ばすときに吐く
・膝や腰、股関節に強い痛みがあるときは行わない
・行って痛みがでるようならば中止する
腰痛体操
ベッドや床などでできる、簡単な腰痛体操をご紹介します。
1.仰向けに寝転がる
2.両手で片膝を抱え、胸に引き付ける
3.反対側の膝を同じように行う
1日5セット行うと効果的です。
また、バリエーションとして
1.両手で両膝を抱える
2.背中を丸めて5秒間静止する
も合わせて行うと良いでしょう。こちらも1日5セット位までを目安に行ってください。
体重が増加して腰痛になったとき、はじめて運動不足を省みる人もいるでしょう。
気づいたそのときから運動をはじめましょう。同時に腰周りの筋肉の強化も大切です。
地味な運動ですが、毎日続けると日課になります。ぜひ、腰痛予防に努めてみてください。
もし、肩こりや腰の痛みにすでにお悩みであれば、クリニックで治療することができます。注射だけですぐに終わる肩こり治療・腰痛治療で痛みを解消して、腰痛に備えてみてはいかがでしょうか。
体重の増加と腰痛の関係のまとめ
- 腰痛の原因は、重いものを持つ、筋肉の緊張による血行不良、運動不足による筋肉の衰えなどがある
- 体重増加により腰が痛くなることもある
- 腰の病気としては、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症がある
- 体重が増加すると腹部が太くなり、バランスをとるため重心が前に行き腰に負担がかかる
- 日常生活における、座る、立つ、寝るなどの姿勢が大事
- 運動を毎日行う
- 腰痛体操も痛くならない範囲で行う
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