シミやシワなどの治療に使われる「トレチノイン」。ビタミンAが肌によいことは、広く知られていますが、トレチノインはビタミンAの吸収をよくするために合成された物質で、「ビタミンA誘導体」と呼ばれています。また、トレチノインはヒトの血液中にも微量ながら流れていますから、アレルギー反応などを起こす心配がありません。
アメリカでは治りにくいニキビの治療薬として認可されているトレチノイン。シワや光老化などにも効果があると言われ、エイジングケアの味方として注目されています。
トレチノインの働きや使い方は?
トレチノインのことを理解するために、まず、皮膚の新陳代謝について確認しておきましょう。
皮膚を構成しているのは、外側から表皮・真皮・皮下組織です。いちばん表面にある表皮の中で、真皮と隣り合っている表皮の深い層の部分は「基底層(きていそう)」と呼ばれています。そこで表皮の細胞は生まれ、上に押し上げられ、いちばん外側の角質になって、やがて、垢として皮膚から剥がれるようにできています。この表皮細胞の新陳代謝を「ターンオーバー」と呼び、これには1ヵ月ほどかかります。
表皮の基底層付近では、メラニン色素が生成されます。紫外線など外界からの刺激を受けると、メラノサイトという細胞がメラニンを産生し、メラニンからメラニン色素が生じます。通常、メラニン色素はターンオーバーによって排出され、色素沈着を起こすことはないのですが、過剰な紫外線の刺激などを受けると、メラニン色素も過剰にできるので、排出しきれなかったものが残ってシミとなります。また、ターンオーバーの乱れもメラニンの排出を滞らせ、シミの原因になります。
トレチノインには、表皮の細胞をたいへん活発に増殖させる働きがあります。その結果、表皮の細胞は押し上げられてメラニン色素も一緒に持ち上がり、2~4週間で皮膚と一緒に剥がれ落ちます。また、トレチノインはヒアルロン酸やコラーゲンの産生を促し、肌の若返りを果たすので、小じわの治療にも使用されています。
トレチノインの働き
トレチノインの働きをまとめると、次のようになります。
・表皮の細胞分裂を強力に促して、皮膚の再生を活発にすることでメラニン色素を排出する
・古い角質をとるピーリング作用がある
・表皮内のヒアルロン酸などの合成を高めることで、みずみずしい皮膚を保つ
・長期間使用すると、表皮や真皮を厚くし、コラーゲンの生成を促し、たるみや小ジワが改善する
・老廃物が排出されやすくなり、ニキビが改善する
・余分な皮脂の分泌を抑える
また、トレチノインは、レーザー治療ができないシミ(=肝斑:かんぱん)や、ニキビや虫刺されやかぶれなどによって炎症が起きた後にシミになって色素沈着する「炎症後色素沈着」にも使用することができます。
トレチノインの使い方
通常1日2回、トレチノインを配合した外用薬(塗り薬)を治療したい箇所に塗布します。
ハイドロキノン※と併用することが多く、トレチノインクリームでメラニンを排出させ、ハイドロキノンで新しいメラニンの産生を抑えるという方法を取ることが多いようです。
使い始めて数日~2週間ほどで、皮膚のカサカサした感じや赤みが出てきます。使い始めて2週間程度で様子を見て、不安なようであれば皮膚科へ相談しましょう。
その後、カサつきや赤みなどの反応が軽くなってきますので、使用する回数を減らしたり、隔日で使用したりするなど、身体に合った使い方に変えていきます。
ただし、個人差がありますので、医師に相談しながら決めるのが良いでしょう。
特に赤みや痛みが強く出てきたら、すぐに使用を中止して、医師の診察を受けましょう。
ターンオーバーの周期にもよりますが、4~8週間で徐々に赤みが引き、シミの改善がみられることが多いようです。
※ハイドロキノンとは?
ハイドロキノンは植物に含まれる天然の成分で、酸化を防ぐ働きをします。
ハイドロキノンはメラニンを生成させる酵素の働きを阻害してシミを予防します。
ただし、トレチノインクリームと同じように作用の強い成分ですから、医師の指示のもとで使用をすることが大切です。
トレチノインの使用にあたっての注意事項
トレチノインは、効果が強くはっきりと出ることが多いため、必ず注意事項を確認して使用してください。また、何かあった時には必ず医師に相談しましょう。
・妊娠中や授乳中、妊娠の予定がある場合は使用しないでください。
・皮膚の赤みが強くなった場合は、使用を中止しましょう。
・使用の際は日差しが入らないよう遮光し、外出時は日焼け止めを使用してください。日焼けをすると赤みがとれないまま残ってしまうことがあります。
・使用中は肌が敏感になっているので、肌をこするなどの摩擦は避けてください。
・小じわの改善も希望する場合は、半年以上の継続が必要です。
・洗顔や入浴、洗髪は、使用当日から可能です。
・トレチノインは過剰に使用するとかぶれなどが起こることがあります。医師の処方のもと、指示に従って使用することが大切です。
・心配なことや不安なことがあったら自己判断せず、医師に相談しましょう。
・ターンオーバーを強力に促進させる効果があるので、角質が剥がれて一時的に肌が無防備な状態になります。バリア機能が低下するので、ニキビなどができることがありますが、そのままトレチノインクリームの使用を続けることで、新しい角質が皮膚の表面を保護しニキビは治まっていきます。
トレチノインのまとめ
- トレチノインとはビタミンA誘導体で、ビタミンAの吸収をよくする物質
- シミの治療など、エイジングケアに使用されている
- ハイドロキノンと併用することが多い
- ピーリング作用がある
- ニキビがきれいになる
- たるみや小じわにも効果がある
- 妊婦、授乳中、妊娠予定の場合は、使用できない
- 皮膚の赤みが強くなったら即中止する
- 日焼けをしたり肌をこすったりしない
- 強い薬なので、必ず医師の処方のもとで使用し、指示を守る
- 自分で判断して使用を止めたり、増やしたりしない
- 効果は個人差があるので、不安があったら医師に相談する
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