顔が赤くなることを「赤ら顔」と言いますが、ファンデーションなどでもカバーできなかったり、一部分だけ厚塗りになってしまったりと、自己流の対処法では太刀打ちできない場合があります。
実は、赤ら顔にはいくつかの原因が考えられるため、対処法も異なります。そこで今回は、赤ら顔の原因や症状、治療法についてご説明します。
赤ら顔とは
赤ら顔とは、顔が赤くなった状態を指します。
たとえば、暖かい場所にいてほてったときや、お酒を飲んだときなど、誰しも顔が赤くなる経験をしたことがあると思います。このようなケースは、身体の生理的な反応として出現していますので、通常は時間の経過とともに自然と赤みは引いていきます。
しかし、こうした反応とは違う、さまざまな原因で顔の赤みが長く続いてしまうことがあります。次のような病気が疑われます。
赤ら顔の原因
赤ら顔の原因について、代表的な例をご紹介します。
アトピー性皮膚炎
かゆみをともなう湿疹ができて、良くなったり悪くなったりを繰り返す皮膚疾患です。
皮膚が赤くなる「紅斑(こうはん)」も、アトピー性皮膚炎の特徴的な症状です。症状は身体のさまざまな部位に出ますが、顔に出ることもあります。
酒さ(しゅさ)
顔の皮膚が赤くなり、血管が拡張した状態が数か月以上続く皮膚疾患です。鼻や頬、あごなどを中心に赤みが出始め、悪化すると顔全体に赤みが拡がったり、鼻などから皮脂が出てきたりすることもあります。
このほか、かゆみやほてりを伴う人もいます。中高年に多く見られる病気で、若い人がかかることはあまりありません。原因不明で難治性と言われていますが、悪化の要因として、熱や日光、アルコール、辛い食べもの、ストレス、ホルモンの異常などが指摘されています。
毛細血管拡張症
皮膚は、外側から表皮、真皮、皮下組織の三層構造をしています。そのなかの真皮を流れる毛細血管が拡張し、戻らなくなった状態を「毛細血管拡張症」と呼びます。
毛細血管が拡がったままになるため、血液の量が増加して血管が目立って見えたり、皮膚に赤みが拡がったりすることがあります。
原因は、先天的な病気や体質、膠原病など全身の病気、紫外線の影響など、さまざまです。症状の現れ方も人によって違いますが、なかには鼻や頬全体に赤みが拡がる人もいて、いわゆる赤ら顔の状態になります。
前述の酒さは中高年がおもな患者ですが、毛細血管拡張症は若い人でも発症します。
酒さ様皮膚炎(しゅさようひふえん)
皮膚の赤みなどの症状が酒さに似ているとして、その名が付けられています。ただし、酒さ様皮膚炎は原因が特定されており、長期間顔にステロイド薬を使用していることによって発症します。
そのため、症状は薬を使っている部位を中心に現れます。そもそもステロイドは、皮膚に何らかの症状が出た場合、医師の指導のもとで使用する薬です。医師の指示通り、正しく使用している分には問題ありません。
ところが、なかには症状がおさまった後も使い続けるなど、誤った使い方をしてしまう人もいて、このようなケースで酒さ様皮膚炎を発症することがあります。
脂漏性皮膚炎
頭皮や髪の生え際、顔など、皮脂の分泌が盛んな部位にできる皮膚炎です。乳児にみられる乳児湿疹も脂漏性皮膚炎の一つですが、成人でも発症することがあります。
鱗屑(りんせつ:角質細胞が剥がれ落ちたもの)や皮膚の赤みが特徴的な症状です。発症には、皮脂をエサにする「マラセチア」という菌の関係が指摘されています。
「マラセチア」は皮膚にいる常在菌で、健康な皮膚にも存在しています。ストレスや食生活の悪化、ホルモンバランスの乱れなどの要因によって、皮脂が過剰に分泌されると、マラセチア菌が増殖して脂漏性皮膚炎を引き起こします。
そのほかの皮膚疾患
ここまでいくつかの病気をご紹介しましたが、これらはあくまでも一例にすぎません。
ほかにも、ニキビ(ざ瘡)が原因で赤ら顔になることもありますし、光への過敏な反応で皮膚症状が現れる「光線過敏症」、化粧品やシャンプーなどによる「接触性皮膚炎」なども赤ら顔を症状とする病気です。
また、複数の皮膚疾患を合併している可能性も考えられることから、皮膚科医でも診断が困難な事例もあります。
赤ら顔には皮膚疾患以外の原因も
赤ら顔は、必ずしも皮膚の病気によって起こるわけではありません。
たとえば、先述の「血管拡張症」で触れた膠原病や、甲状腺ホルモンの異常(甲状腺機能亢進症)、細菌やウイルスへの感染など、身体疾患の一症状として皮膚に赤みが生じることもあります。
また、更年期にみられる症状である、顔のほてり、いわゆる「ホットフラッシュ」に伴って顔が赤くなる人もいます。
さらには、人とコミュニケーションを取るときや人前で話すとき、不安に襲われたときなど、過度な緊張が原因の「赤面症」は、顔に症状が現れる精神的な疾患の一つです。
赤ら顔の治療法
このように、赤ら顔を症状とする病気はいくつも考えられますので、それぞれの原因に合った治療の選択が改善への第一歩です。
とくに皮膚以外の病気が原因のケースでは、まずはおおもとの病気を治療する必要があります。そのため、皮膚以外の症状の有無を確認し、内科や心療内科、精神科など、症状に応じた医療機関を受診してください。
一方で、症状が出ているのは皮膚だけという人は、皮膚科を受診しましょう。
皮膚科では、病気の原因に応じた内服薬や、外用薬による薬物療法を行います。また、誤ったスキンケアや日常生活の乱れが、発症や悪化の原因になるケースもあります。
その場合は原因を特定し、化粧品などの使用を中止する、紫外線対策を行う、生活習慣を見直す、といった適切な対処が必要です。皮膚の状態によっては、レーザー治療や光治療なども選択肢の一つです。
これらの治療は、原因となる病気によって健康保険適用の有無が異なりますので、治療前に確認しましょう。
なお、繰り返しお伝えしているように、赤ら顔の原因として考えられる病気は多く、医師でも診断の難しいケースがあります。
市販薬や家にある薬を使うなど、自己判断に頼っているとかえって症状の悪化を招きかねませんので、注意が必要です。
赤ら顔で悩んでいる人は、まずは病院で相談してみよう
長い間赤ら顔に悩まされている人のなかには、「もう治らないもの」とあきらめている人もいるようです。
しかし、原因となる病気や症状の程度によっては改善が見込めるケースもあります。ぜひ専門医に相談してみましょう。
まとめ
- 赤ら顔とは顔が赤くなった状態を指す
- 健康な人でも、生理的な反応で一時的に赤ら顔になることはあるが、病気などが原因の場合もある
- 赤ら顔の原因となる病気として、アトピー性皮膚炎、酒さ、毛細血管拡張症、酒さ様皮膚炎、脂漏性皮膚炎などが挙げられる。ほかにもニキビや光線過敏症、接触性皮膚炎など、さまざまな病気の関与が考えられる
- 複数の皮膚疾患を合併しているケースもあり、原因となる病気の特定が難しい場合もある
- 赤ら顔の原因は、皮膚疾患以外にも、膠原病や甲状腺機能亢進症といった身体の病気、赤面症などの精神的な病気、さらには更年期の症状などが関係していることもある
- 赤ら顔を治すためには、原因に合わせた治療を行うことが重要である
- 皮膚以外に症状が現れている場合は、内科や心療内科など症状に応じた医療機関を、皮膚だけに症状が出ている場合は皮膚科を受診するとよい
- 皮膚科では、原因や症状に合わせた薬物療法のほか、スキンケアや日常生活の見直しが必要になることもある
- レーザー治療や光治療が有効なケースもある
- 自己流のケアが悪化を招く原因にもなり得るので、何らかの症状が出ている場合は必ず医療機関を受診することが大切である
- 受診せずにあきらめている人は、赤ら顔が改善する余地もあるので専門医に相談してみるとよい
category
顔
肌
ボディ
その他