肌に潤いがない、乾燥して粉がふいたようになる…そんな乾燥肌が起こりやすいのは、トラブルに悩まされていませんか?乾燥肌は、空気が乾燥する冬だけではありません。エアコンが欠かせない夏も含め、一年中起こりやすい肌トラブルの一つです。今回は、そんな乾燥肌のお悩みを解決する救世主として今注目の「ヘパリン類似物質」について詳しくご説明します。
さまざまなトラブルを招く肌の乾燥
年齢とともに気になる人も増える肌の乾燥。乾燥肌は、肌の水分や油分が不足して潤いが失われ、さまざまなトラブルが起こりやすくなっている状態です。健康な肌にはバリア機能が備わっていますので、肌の最も外側にある角質層が、肌の内側の水分や油分が逃げないように防いでくれます。ところが、ターンオーバー(肌が生まれ変わるサイクル)の乱れや、空気の乾燥、紫外線によるダメージ、加齢などによって、バリア機能は低下してしまいます。そうすると、肌の水分は逃げやすく乾燥しやすい状態に。さらに乾燥が強まると、皮膚のカサつき、赤みやかゆみ、シミやニキビ、吹き出物、湿疹といった肌荒れの症状に悩まされるようになります。
そのような乾燥肌対策に効果的として、今注目されている成分が「ヘパリン類似物質」です。どのような成分なのでしょうか。
「ヘパリン類似物質」とは?
ヘパリン類似物質は、その名の通り「ヘパリン」に似た作用を持つ天然由来の成分です。ヘパリンは、「ムコ多糖類」というグループに属する物質で、ヒアルロン酸などと同様に、私たちの体内にもともと存在しています。そのため、ヘパリン類似物質は安全性の高い保湿剤の有効成分として、50年以上にわたり乾燥肌の治療に使われてきました。皮膚を保湿する代表的な働きは、保湿、血行促進、抗炎症作用の3つです。単に肌の外側から潤いを与えるだけではなく、内側から新陳代謝を促す効果があるため、乾燥による肌トラブルの根本的な解決に期待が持てます。
ヘパリン類似物質が使われている薬で最も有名なのは、「ヒルドイド」と名のつくシリーズです。なかでも「ヒルドイドソフト軟膏」は、皮膚科や小児科などで処方されていますから、目にしたことがあるという人も多いかもしれません。医療用医薬品につき医師の診察なしでは入手できませんが、ヒルドイドと同等のヘパリン類似物質が配合されているジェネリック商品や、薬局などで購入できる市販薬も数多く登場しています。
ヘパリン類似物質の効果
ヘパリン類似物質の効果について、さらに詳しくみていきましょう。お伝えしたとおり、代表的な働きは保湿です。肌のバリア機能を高め、水分や油分のバランスを整えることで乾燥を防ぎます。乾燥による肌のカサつき、赤み、かゆみといった症状の大幅な改善に期待できます。さらに、肌荒れの改善と予防によって、化粧ノリをよくする、潤いのあるお肌を目指す、というメリットをもたらします。
また、ヘパリン類似物質は、冷えの改善や、けがの治りを早める目的で使用されるケースもあります。血流の循環を良くして、怪我の後などに生じるむくみを和らげる、新陳代謝を促して傷跡の治りをスムーズにする、といった効果も期待できるからです。
このように、ヘパリン類似物質を含む製品は、皮膚科に限らず幅広い分野で活用されているのです。
ヘパリン類似物質の種類
クリーム状
最も一般的なタイプです。なかでも油性クリームはべたつきすぎず、顔だけではなく、手や足などにも塗ることができます。
乳液タイプ
クリームよりも水分が多く、やわらかいテクスチャーでよく伸びますので、肌になじみやすい点がメリットです。
ローションタイプ
サラッとしていてベタつきが少ないため、化粧水感覚で使用できます。さらに最近では、症状や用途に合わせて使いやすいように、ローションの新たな形状として、スプレータイプやフォームタイプの製品も登場しています。
スプレータイプ
広範囲に直接噴霧できます。肌と接触しませんので、とくに赤みや湿疹などの症状が出ている場合は、刺激を減らし、衛生的に使用できるというメリットがあります。逆さにしてもプッシュできますので、背中や腰など、手が届きにくい部分にも使いやすいでしょう。
フォームタイプ
スプレーから泡の形状で出てくるタイプで、均一に塗りやすい点が特徴です。ヒアルロン酸ナトリウムなどが配合されている製品もあり、しっとりとした使用感を好む人にはおすすめです。
ヘパリン類似物質を使うときの注意点
ヘパリン類似物質は、血液が固まるのを抑える作用も持っています。出血をともなう傷や、ジュクジュクとしている傷は、治りづらくなってしまいますので使わないようにしましょう。また、血行を促進する作用もあり、皮膚が薄い子どもや肌が弱い人は、赤みが強くでたり、かゆみが生じたりする可能性が考えられます。比較的安心して使用できるとされている成分ですが、副作用のリスクが全くないとは言い切れません。少しでも気になる場合は、医師に相談しても良いですし、最初は様子を見ながら少量ずつ試すなど、注意して使用しましょう。
乾燥肌の改善にヘパリン類似物質を活用しよう
高い安全性が認められ、豊富な形状から用途によって使いやすいヘパリン類似物質。乾燥肌の改善や予防、アトピー性皮膚炎などに対しても有効で、基本的に乳幼児から使用できます。前述のとおりヒルドイドは医師の処方が必要ですが、ヘパリン類似物質は今やドラッグストアなどでも入手できるようになりました。また、ヒルドイドのジェネリック商品や新たな形状の製品も登場していて、肌の悩みに合わせた使い分けも可能です。乾燥肌の対策の一つとして、「ヘパリン類似物質」を役立ててみてはいかがでしょうか。
まとめ
- 肌のバリア機能が低下すると乾燥肌になり、さまざまな肌トラブルが起こりやすくなる
- ヘパリン類似物質は、保湿剤の有効成分として、乾燥肌の治療に長年使われてきた成分である
- 代表的な働きとしては、保湿、血行促進、抗炎症作用が挙げられる
- 一般的にヒルドイドが有名だが、ジェネリック商品や同等の製品も多く登場している
- ヘパリン類似物質は、冷えの改善や傷の治りをよくする目的などでも使用される
- クリーム状のほか、乳液タイプやローションタイプなど、さまざまな形状の製品がある
- スプレータイプやフォームタイプも登場しており、症状や用途に応じて使用できる
- 安全性は高いが、副作用の可能性もゼロではないので、使用する際はあらかじめ注意事確認する
この記事の監修ドクター
品川スキンクリニック 品川本院
清水 脩介医師
- 日本美容外科学会会員
- 日本美容外科学会認定 美容外科専門医(JSAS)
- アメリカ心臓協会ACLSプロバイダー
- 日本外傷診療研究機構JATECプロバイダー
- サーマクール認定医
- VST認定医
- ジュビダームビスタ®認定医
- ジュビダームビスタ®ボリューマXC認定医
- ジュビダームビスタ®ボリフトXC認定医
- ガルデルマ社 アナトミーマスタークラス2019
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