肝斑治療の一つとしてトラネキサム酸の内服の有効性は実証されていますが、注意が必要な点もいくつかあります。
まず、トラネキサム酸は安全性が高く副作用はほとんどない薬ですが、0.1~5%の方に吐き気、食欲不振、下痢、胸やけ、過敏症、発疹などが現れることがあります。それらの症状が出た場合はすぐに服用を中止してください。
肝斑の改善効果や化粧水などの美白有効成分として美白ケアの面から注目されているトラネキサム酸。
『トラネキサム酸の美白効果や副作用について」品川美容外科 板井医師が解説。
トラネキサム酸にはメラノサイト活性化因子の一つと考えられている「プラスミン」「プロスタグランジン」といった物質の働きを抑え、シミを予防し美白効果に期待ができます。副作用も少なくレーザー治療と合わせて内服することでより美白効果が期待できます。
トラネキサム酸とは?
トラネキサム酸は、人口的に合成されたアミノ酸の一種です。もともと医療の現場では、トラネキサム酸は炎症やアレルギーを抑える効果があるため、湿疹やじんましんなどの治療や止血のために医療用医薬品として処方されており2002年に、厚生労働省から美白効果のある成分と認められました。
医療機関で処方されるのは「トランサミン」という医薬品で、ジェネリック医薬品もいくつか出ています。トラネキサム酸 250mg錠やトラネキサム酸 500mg錠などがありシミの治療薬や、化粧品等に、幅広く使用されています。
トラネキサム酸の美白効果
トラネキサム酸には、シミの原因になるメラニン色素の生成を抑える作用、炎症を抑える作用があり、これにより美白効果が期待できます。具体的には、そばかすや肝斑、老人性色素斑、傷などの炎症後色素沈着といったシミに効果があるといわれています。では、どんなメカニズムなのかをみていきましょう。
まず、メラニン色素の生成を抑えるメカニズムについてご説明しましょう。
シミの予防・シミの治療に
紫外線を浴びると、シミの原因であるメラニン色素を作らせる指令が「メラノサイト」という細胞に出されます。トラネキサム酸は、メラノサイト活性化因子の一つと考えられている「プラスミン」「プロスタグランジン」といった物質の働きを抑え、シミを予防します。つまり、紫外線ダメージによるシミを抑制してくれるということです。
次に炎症を抑えるメカニズムについてです。血液が固まるのを防ぐ「プラスミン」という物質がありますが、トラネキサム酸はこの働きを抑えます。これを「抗プラスミン作用」といい、止血剤に利用されています。
このプラスミンは炎症反応やアレルギーにも関わっているため、トラネキサム酸がその働きを弱めることで、炎症反応やアレルギーをおさえることができます。
このような作用があるため、湿疹やじん麻疹などの症状がある場合にトラネキサム酸は、処方されています。また、メラニン色素が生成される前にメラノサイトの活性化を予防する働きがあるので、皮膚科ではシミの治療にも応用されています。
肝斑の治療に
肝斑の治療法には、特にトラネキサム酸の服用が効果的と言われています。トラネキサム酸は、色素細胞であるメラノサイトの活性化を促すメラニン色素生成に関わる「プラスミン」「プロスタグランジン」の働きを抑制するため、老人性色素班(一般的なシミ)はもちろん、肝斑の原因も防ぐことができます。
肝斑は老人性色素班(一般的なシミ)と併発している場合も多いのですが、シミ治療のための強いレーザーなどが肝斑を悪化させてしまうケースがあります。その点、トラネキサム酸は老人性色素班(一般的なシミ)と肝斑の両方に効果があるので、安心です。
トラネキサム酸の摂取方法
前述したように、トラネキサム酸は止血効果があるので、摂取することで、血液が固まりやすくなる可能性があります。化粧品などで肌から取り入れた場合は、血液に入っていく量も少ないので、血液が固まりやすくなるリスクは低くなります。
トラネキサム酸錠は医薬品の為、服薬する場合は、医師や薬剤師に必ず処方してもらう必要があります。リスクの点から考えると、化粧品で取り入れたほうが安全性は高いといえるでしょう。
内服薬で考えた場合、トラネキサム酸が配合されている市販の医薬品で有名なものは、喉や口内炎の薬として使われているペラックT錠(第一三共ヘルスケア)、トラフル錠(第一三共ヘルスケア)、美白やシミケアを目的としたトランシーノ(第一三共ヘルスケア)などがあります。これらは薬局などで購入することができますが、いずれも使用上の注意に従い正しく使用することが大切です。
また、トランサミン錠という医薬品を婦人科の病院などで処方されたことがある、という方も多いようです。
医療機関で取り扱うことが多いのは先発医薬品の「トランサミン」か後発医薬品(ジェネリック薬)の「トラネキサム酸」ですが、いずれも医師による処方が必要です。
市販薬と処方薬の違い
薬局などで購入できる市販薬も、医師の診察を受けて購入する処方薬も同じ成分(トラネキサム酸)が配合されています。
しかしトラネキサム酸の含有量が、処方薬のほうが市販薬よりも多いという特徴があります。
市販薬では、最大でも成人1日量に含まれるトラネキサム酸の成分量が750mgに対して、処方薬は1日750~2,000mgとなっており、服用量の範囲が広くなっています。
この違いは、医師の診断や観察下ではないことや副作用のリスクなどがあり、安全性の面を考慮しているためです。
また市販薬の場合、トラネキサム酸以外にも複数の有効成分が配合されていることがあります。そのため、トラネキサム酸の高い効果を期待する場合には、処方薬を選ぶことをおすすめします。
トラネキサム酸についてのQ&A
Q、トラネキサム酸の副作用はありますか?
板井医師
Q、トラネキサム酸と飲み合わせに気を付けたほうが良い薬はありますか?
板井 医師
ピルとの併用はできません。風邪薬や歯科で出される止血剤にトラネキサム酸の成分を含むものがあるので、止血剤の処方を受けた際にはトラネキサム酸を内服していることを医師に申し出てください。
また、トラネキサム酸は血液を固まりやすくするため、脳梗塞や心筋梗塞などの持病がある方は、トラネキサム酸の内服が出来るかどうか、医師の診察が必要です。
Q、トラネキサム酸はどれぐらい服用すれば良いでしょうか?
板井 医師
品川美容外科、品川スキンクリニックではトラネキサム酸のみの処方や、美白効果を高める内服薬・外用薬を組み合わせた「美白対策セット」の処方を行なっています。
トラネキサム酸単独での処方の場合、250mg錠を1回1錠、毎食後に摂取するよう指導するケースが多く、内服薬の期間はだいたい4~5週間が目安とされています。品川美容外科では60錠(20日分)もしくは90錠(30日分)で処方を行なっています。
トラネキサム酸カプセル250mg「トーワ」の基本情報
【主成分】 | トラネキサム酸 |
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【錠剤の形状】 | 橙色/淡黄色のカプセル剤、全長17.9mm |
【作用と効果】 |
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【用法・容量】 | 通常、成人は1日3〜8カプセル(主成分として750〜2,000mg)を3〜4回に分けて服用 ※治療を受ける年齢・症状により適宜増減 |
【作用と効果】 |
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【主な副作用】 | かゆみ、発疹、食欲不振、吐き気、嘔吐、胸やけ、痙攣 |
【注意事項】 | 次のような方は使う前に必ず担当の医師と薬剤師に相談すること。
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※出典:くすりのしおり
トラネキサム酸の処方について
板井 医師
品川美容外科でもトラネキサム酸の処方を希望される方は多いですね。
処方の際にはまず、内服の注意点をご説明します。そして、肝斑治療としては、トラネキサム酸の内服という単独の治療だけでなく、「肌をなるべく擦らないようにする」という生活習慣の指導も行っています。
しっかりと治療したいという方にはビタミンCやレーザートーニングの併用の有効性も説明し、患者様の希望にあった治療ができるように心がけています。
トラネキサム酸以外のシミ・肝斑治療
肌表面にすでにあるシミや肝斑を市販の化粧品や内服薬だけでケアするのはなかなか難しいものです。肌のお悩みはセルフケアだけでなんとかしようとせず、専門のクリニックで相談してみることも解決の糸口になります。
品川美容外科、品川スキンクリニックでは内服薬のご提案をはじめ、シミや肝斑の症状に合わせた様々な治療を行なっています。特に、レーザートーニングはシミ・肝斑の治療に効果的です。
お得な初回限定価格も設定しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
板井 医師
肝斑はまだ原因がはっきりわかっていない皮膚疾患ですが、治療方法のひとつにレーザートーニングがあります。これはレーザートーニングを行った場合に肝斑の改善が認められたためで、メリットとしては トラネキサム酸を内服できない方でも治療を行うことができることが挙げられます。
また、レーザートーニングとトラネキサム酸の内服を併用することで 治療の相乗効果を期待することも出来ます。レーザートーニングは定期的に通院して施術を受ける必要がありますが、トラネキサム酸の内服と併用することで頻繁に通院することが難しい方でも効率的に治療ができるというメリットがあります。
トラネキサム酸の美白効果や副作用:まとめ
- トラネキサム酸はもともと医療の現場で、炎症やアレルギーを抑えるため、湿疹やじんましんなどの炎症の治療や止血に使用されていた成分である
- 現在はシミの治療薬、化粧品などの商品として幅広く使用されている
- シミの原因になるメラニン色素の生成を抑える作用、炎症を抑える作用があり、これによって美白効果がある
- そばかすや肝斑、老人性色素斑、傷などの炎症後色素沈着など、シミに効果がある
- トラネキサム酸のメラニン色素生成を抑え、シミを予防するメカニズムは、「プロスタグランジン」などの物質の働きを抑えるためである
- トラネキサム酸は、血液が固まるのを防ぐプラスミンという物質の働きを抑える作用があり、これを「抗プラスミン作用」という
- トラネキサム酸の炎症を抑え、シミを予防するメカニズムは、メラニン色素が生成される前にメラノサイトの活性化を予防するためである
- トラネキサム酸は止血剤にもなっているものなので、摂取することで、血液が固まりやすくなる可能性がある
- 化粧品や市販薬などで肌から取り入れた場合は、血液に入っていく量も少ないので、血液が固まりやすくなる副作用のリスクは低くなる
- 服薬する場合は、医師や薬剤師に必ず相談が必要であり、化粧品で取り入れたほうが安全性は高い
- とくに服薬される場合は、血液を固まりやすくする作用があるため、心筋梗塞、脳梗塞、血栓性静脈炎などの病気のある方は注意が必要である
- 副作用は比較的少ないといわれているが、食欲不振、胸やけ、嘔吐などの症状があらわれることもあるので注意が必要
この記事の監修ドクター
品川美容外科 新宿院
板井 徹也医師
- 日本美容外科学会会員
- 日本美容外科学会認定 美容外科専門医(JSAS)
- VST認定医
- ジュビダームビスタ®ボリューマXC認定医
- ジュビダームビスタ®ボリフトXC認定医
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